第15章 狼と眠り姫【カラ松】※
彼が、私の首筋に顔を埋める。唇の感触が伝い、軽くキスされたかと思ったらそのまま肌に吸いつく。
「…っあ…」
場所が場所だからというのももちろんあるけど、それより…
彼に…カラ松に今、こんなことをされているのが…恥ずかしくてどうにかなってしまいそう。
「カ…ラまつ…お願い、やめて…」
「…ん、なぜだ?」
首に息がかかり、背筋がゾクゾクとして心臓の鼓動が早くなっていく。
「なぜ、って…んん…っ」
彼はなおも吸い付くのをやめようとしない。
なんとか…なんとかやめさせないと。このままじゃ行為はエスカレートする一方だ。
まだ周囲に気付かれていないうちに…
「…ひゃっ!」
突然首筋に鈍い痛みが走り、喉奥から甲高い声が出た。
「あ、や…なんで…っ」
恐らく噛まれたのだろう。そんなことまでされるとは思ってなかった私は、目尻に熱いものが込み上げてくるのを感じた。
彼は、本当に優しい人だと思っていた。おそ松のことも本気で怒っていたし、謝罪も真剣そのもので、疑う余地なんてなかったのに。
「…言っただろう、。¨優しい男¨は、こんなことしない」
「……っ…う…カラ松の、バカ…!」
「…え…」
涙が、頬を伝う。私の様子がおかしいことに気付き、彼は顔を上げて私を見つめた。
「…泣いているのか?」
「み、見れば分かるでしょ…悔しい…!」
知らない奴だったら、何がなんでも抵抗してやるのに。
嫌いな奴なら、抵抗した後倍返しにしてやるのに。
身動きができないから、とか、そんな理由抜きにしても、
私は彼に手を出せない。
幼なじみで…大嫌いだけど、大好きな人だから。
騙されていたとしても、それは私がいつまでも子供で迂闊だからだ。簡単に心を許す素振りをして煽ってしまった私が悪い。
ただ…優しいと思っていた彼に痛くされて、悲しかったのは事実で。
どうすればいいか分からなくて、私はただ、涙を流した。