第15章 狼と眠り姫【カラ松】※
どこか私を試すような瞳を向けられて、一瞬言葉に詰まる。
「…確かに無防備だったかもしれないけど、結果論とはいえ何もなかったんだから別にいいじゃない」
「ふーん……君さぁ」
「な、なによ」
「…いんやー、なんにも?誰かさんに睨まれてるから俺は退さーん☆」
「は?誰かさんって……」
居間を出ていくおそ松を不審に思いつつ辺りを見回すと、
「…っ!」
台所に続く襖の側に立っているカラ松が、鋭い眼光でこちらを睨んでいた。
まるで親の仇でも見るような…あんな顔、見たことない…
声をかけようか迷っていると、向こうからこちらにやってきた。表情は和らいだけど、眼光は鋭いままだ。
「…。おそ松と何を話していたんだ?」
「え、な、何って…」
「俺のことか?」
ど、どうしてそんなことを聞いてくるの?昨日も、おとといも、6つ子のみんなは昔から仲だけは良かったはずなのに、どうしてこんなにお互いを意識して敵対しようとするの?
…私のせい?でも最初はみんなで協力してたのに。
ううん、もしかしたらそれすら…
兄弟同士、お互いを欺くための嘘だった?
「答えられないならそれでも構わない。…俺と出掛けようか、」
彼が私の手を引く。いきなりで抵抗しそうになったけど、なんだか逃げてはいけない気がして、私は彼の手を握り返した。
「…!」
カラ松が、驚いたように私を見る。てっきり断られると思っていたのだろう。
「行かないの?早くしないと他の兄弟に気付かれるわよ」
わざと急かすと、彼の手に力が込められた。
「…行くぞ」
そうして私たちは、後ろで騒いでいる兄弟たちに気付かれないうちに、二人で家を出ていった。