第8章 7 Melody.
秒針の音がやけに大きく聞こえる。震えを早く止めろ、止めろと言われてるみたい。
急かしてもおさまらないのに。
でもこのまま自分を抱きしめているわけにもいかないんだ。
八乙女さんや十さん、それから陸も……みんな心配してる。
(訳を話さなきゃ……っ)
「あ、の……っ」
「姉……!もう大丈夫なの?怖くない?」
「まだ……ちょっと怖いけどっ……」
「ならもう少し休みなよ……!」
「大丈夫っ……あのっ……八乙女さん、十さん……っ」
「どうした?」
「ごめんなさいっ、私……実は男性が怖いんです……っ」
思いっきり「イヤっ!」と言った後で言い訳は通じない。
とにかく説明してわかってもらわないと……八乙女さん達には不愉快な思いをさせたままになってしまう。
ライバル事務所の相手でも、先輩達にはきちんと言っておかなきゃ。
「男が怖いだと……?」
「それってつまり男性恐怖症……?」
「はいっ……普通に話すぶんには大丈夫なんですけどっ……触られるのはまだ怖くて……っ」
「……だから俺が頭に触ろうとした時嫌がったのか」
「すみませんっ……」
「謝らないで。分かればこれから気をつけられるから。そうだよね、楽」
「ああ。悪かったな、怖がらせちまって」
「いえっ……本当にすみません……っ」
「だからお前は謝んな」