第8章 7 Melody.
触れようとしたけど躊躇って、手が彷徨うこの光景には見覚えが。
八乙女さんの姿が……さっきの三月さんと重なる。
「あっ……悪い」って、バツが悪そうに頭を掻く八乙女さんはなんだか子供みたい。
イケメンのくせに可愛いとまで思わせるなんて……ある意味恐ろしい人だ。
「陸くん、ちょっと聞いてもいいかな?」
「は、はい」
「天はどこまで知ってるんだ?」
「……番組の事はオレから言いました。でも姉に男性恐怖症がある事は言ってないから知らないはずです……」
「そうか……なら俺達は下手に話さない方がいいね」
天に伝えるのは私の役目。
そこだけは譲りたくないって思ってたけど大丈夫みたい。
八乙女さんも「そうだな」って言ってくれてる。
「ありがとうございますっ……天にはいつか私から話します……っ」
「うん。俺達は黙っておくよ、大丈夫」
「はいっ……」
男性恐怖症ーー。
何故そうなったのか……2人は最後まで詳しく聞いてこなかった。
多分察してくれたんだろう。
聞かれたら答えるつもりだったけど……彼らの気遣いに今は感謝だ。
「じゃあちゃんも落ち着いた事だしそろそろ帰ろう、楽」
「ああ」
「わざわざありがとうございました。八乙女さん、十さん」
「楽でいい」
「……へっ?!」
「呼んでみな」
(ハードル高っ……)
「が、楽さん……?」
「まあ上出来だな。収録、頑張れよ」
「周りに負けないで、キミらしくやればいいんだよ。放送楽しみにしてるからね」
「は、はいっ!」
「じゃあな、」
実は私……この2人には少しだけ怖いイメージを持っていた。
TRIGGERって大体クールにキメているから。
けど実際会って印象が変わった。
八乙女さんも十さんもとても優しい良い人だ。
「本当にありがとうございます……楽さん、十さん……」
「姉……今なんて言ったの?」
「な、なんでもないよ!あーあ、なんかお腹すいちゃった!ご飯食べよ!」
「えっ!ちょっ、姉押すなよ……!」
◆7 Melody.END◆