第2章 1 Melody.
(それ言っちゃダメ……!!)
ドジなところは昔から変わらない陸。
深く考えないままサラッと言おうとしたんだろう。
まあ陸らしいけど……〝好き〟って言葉を口にされたら面倒な事になりそうだから、私は慌てて誤魔化しにかかる。
「あ、ああああ!!そういえば陸!たっ、体調どう?!」
「えっ……?」
「ずっと気にしてたんだよ?!まだ辛くなったりする?!」
「……うん、たまにね。でも大丈夫だよ」
「そ、そっか……よかった」
(なんとか話をそらせられたかな……)
「ありがとう姉。それより天にぃ……」
(だから今は天にぃから離れて……!)
「あああああ!!そっ、そろそろ私レッスンの時間なんだ!そうですよね、社長さんっ!!」
「え?」
(え?じゃないよ……っ)
お兄ちゃんっ子なのはわかる。
わかるけど今はやめてほしい。
6年前のあの日の事、陸にまだ話していないのに……。
(ちょっとは空気読んでほしかった……っ)
「……うん、いいね!」
「え……?」
(いいって何がですか社長さん……!)
「くん、歌ってみようか」
「……えぇっ?!」
何かと思いきや……この人は今ここで私に歌えと言う。
男だらけのこの場所で。
いずれはもっと大勢の前で歌う事になるかもしれないからそれはいいんだけど……一体何を歌えばいいのだろうか。
私にはまだ曲がない。