第5章 4 Melody.〜天side〜
「ここが俺のとっておきの場所なんだ!」
「……海」
「なんもねぇな」
こっちだよって龍に案内されながらやってきた浜辺。
確かに人は居なくて良い場所だけど……本当に海以外何もない。
「そ、そう言わなくても……」って龍がションボリしている。
「いつ見つけたんだよこんな場所」
「もう大分前だよ……。なかなか故郷の海を見れないから、せめて近場でいい所ないかなって探したんだ……」
「へぇ……でも沖縄の方が綺麗でしょう」
「透明度でいったらそうだけど……ここは静かだし、こうして眺めてると気分が落ち着くんだ」
本当に龍は海が好きなんだなと思った。
目を細めて遠くを見つめる彼を見れば、誰もがそう感じるだろう。
優しい波音がボク達を包む。
「確かに静かだな」
「光が波に反射して綺麗だね」
「……お前そんな感想も言えんのかよ」
「何?悪い?」
「誰も悪いなんて言ってねぇだろ」
楽が「なんか調子狂う」なんてブツブツ言ってる。
全く……彼はボクをなんだと思ってるんだろうか。
しかしこうやって海を眺めていると、段々と心洗われるような感覚になってくる。
今なら素直になんでも言える……そんな気がした。
(もしキミと一緒に来てたら……好きって伝えてたかもね……)
「げっ。なんだよ天!!」
「何?」
「やけに優しい顔すんな!マジで調子狂うだろ!!」
「なら狂ってなよ。ほら、3回回ってワンは?」
「?!誰がするかよ!!」
「……クスッ。ねぇ、もう少し近付いてみよう」
「あっ、おい天!!ったく……!」