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【アイナナ/R18】Melody.【九条天】

第4章 3 Melody.




(か、歌詞が可愛すぎる……)
「うーん……わっ!」

「おっと……何やってるんですかあなたは」

(一織くんっ……?)
「ごっ……ごめんなさ……っ」



あの後紙とテープを渡された私は歌詞を見ながら廊下を歩いていた。
そこへ仕事から戻ってきた一織くんとぶつかり、その反動で紙が床に落ちる。


この事務所にいる人はもう怖くないと思ったのに、あのおじさんにもこんな感じでぶつかったよなと考えると……身体が震えて止まらない。



「前を見ないで歩くからですよ」

「っ……ごめっ……」

「……泣いてるんですか?」

「っ……」
(ごめんなさいっ……)

「大丈夫ですよ。私は何もしません」



まだ怖がっているんですか?
そろそろ克服してください。


って叱られるかと思った。
一織くんは結構ズバズバ言う人だから。

でもそんな予想は外れ、彼は優しげな声で私に微笑みかけてくれた。


いつも難しい顔ばかりしているからか……笑うとなんだか可愛い。



「っ……何見てるんですか」

「えっ……あ、ごめんなさい……可愛いなってつい……」

「可愛いってなんですか!私は男ですよ!」

「うん……知ってるよ……?」

「そういうのはあなたみたいな人に言う言葉です!」

「わ、私……?」

「っ……何でもありません!震えがおさまったようなので私はもう行きますよ!」

「あっ……一織くん……!」



途中から一織くんの顔は真っ赤で……年下らしいあどけなさを見た。
彼も普通の高校生なんだなとちょっと安心。


まああの笑みは狙ってやったんじゃないってわかってるけど……現に身体の震えが止まっているのは確かだ。


一織くんに感謝しなきゃ。



「ありがとう、一織くん……」

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