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【アイナナ/R18】Melody.【九条天】

第4章 3 Melody.




〝ねぇねぇキミ、アイドルやってみない?〟


そう社長さんから声をかけてもらったのは、丁度田舎から東京に戻ってきた日。
最初は全然信じられなくて、私は何回もお断りをしていた。

でも社長さんは諦めず、ぴったりとくっついて回ってきたんだ。


こっちが「あなたは本当に芸能事務所の方なんですか……?」と言えば名刺を差し出し

「いきなりやってみない?と言われても頭がついていきません……」と言えば「じゃあそこのお店で話しよう」


結局喫茶店に連れて行かれ、そこで「私には無理です……」と言っても「まあまあ、そう決めつけないで」と返してきたし

無理だと思う理由を、周囲の目を気にしつつ泣きながら話せば「大丈夫だよ。僕がサポートするから」と言ってきた。


これは逃げ出せない。どうしよう。


そう思いながら困っていた時、丁度お店にあったテレビがCMを映し出していて……そこにTRIGGERが出ていたんだ。

天の姿を見た瞬間に胸が締め付けられて……「あの時はごめんなさい……。もう二度と手の届かない存在になっちゃった……」って辛くなった。


けどもし社長さんの話を受けたら、いつか天と会えるかもしれない。
何年かかっても、自分がアイドルとして上までのぼれば再会出来るかもしれない。


初めは「絶対無理、私には向いてないし怖い」って考えばかりが頭を埋め尽くしていたけど、どうせ社長さんから逃げられないのなら……この理由でもいいのなら……私、アイドルをやってみようって思った。



「どうかなー。キミには素質があると思うんだけど」

「……わかりました」

「えっ?本当?」

「は、はい。色々迷惑をかけるかと思いますが……」

「うんうん!いやーよかった!キミなら頷いてくれると思ってたんだよ」



だから話を良い方に終わらせて、こうして小鳥遊事務所が所有する寮に今居るんだ。


でもよく考えたら、私には天に会う資格はない。
いきなり消えといてまたいきなり現れるなんて……彼にとったらふざけるなだろう。


まだ初日なのに……早くも先が見えなくなってきた。

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