第39章 38 Melody.〜天side〜
帽子と伊達眼鏡を手に取り、ボクは家を出た。
嫌な予感がして……ついアクセルを踏み倒してしまう。
可哀想
大変
六弥ナギと陸の言葉が交互に浮かんで……頭の中で渦を巻いている。
「チッ……」
(渋滞……)
最後余裕そうなセリフを吐いたボク。
なのに途中で電話を切ってしまったのは、きっと焦ったからだ。
早く状況を知りたい。
はどうなってるの……。
今日1日、彼女に対する批判などは耳にしていなかったから……トラブルの原因に心当たりがなくて余計不安になる。
(……こんな時に誰)
「はい、九条です」
「何改まってんだよ」
(楽……)
「……キミと話してる暇はない。じゃ」
「はっ?!ちょ、おい天––––」
(……遅い)
ノロノロと進む車の列。
そこをすり抜けていくバイクを見ると無性に苛立った。
これでは到着が何時になるかわからない。
(抜け道……)
そのまま真っ直ぐ行けば割りと直ぐ着く筈だった。
けど渋滞の波にハマったままでは、いつもの倍以上も時間がかかってしまう。
だからボクはハンドルを切った。
遠回りだけど……今はこっちの方が早い。
(……また電話)
「何?」
「いきなり切ってんじゃねぇよ!」
「話してる暇はないって言ったでしょう。じゃ」
「ちょ!おい待てコラッ––––」
「ハァ……」
(暇な大人……)