第36章 35 Melody.
「姉!今日のレッスンどうだった?!オレ、姉の新曲楽しみにしてるんだ!」
「ごめん、凄く疲れてるの……ちょっと休ませて……」
あの後、いつ再開されるんだろうと思いながら三月さんの話を聞いていた私。
でも全然始まる様子がなかったし、おまけにだんだんと自分まで怒られてるような感覚になってしまい……今日は相当な精神ダメージを食らった1日となった。
おかげでフラフラ。
「大丈夫……?そんなに厳しかったの?」
「ある意味そうだった……」
(ダンスもやったけど動きが難しかったからなぁ……足が痛い……)
「ある意味ってなに?」
「……陸も聴く?これ……」
「テープ……?」
「うん……まじこなループよりハードかも……」
力なく陸に渡したテープの内容は、直ぐさま彼の耳に入った。
初めは「流石だなぁ」って、ナギさんの本場の発音に感心していたけど……やはり陸も、途中から表情が引き攣りだしてしまう。
こ、これ天にぃが聴いたら怒るだろうなぁ……と呟きながら。
「OH、リク!それはワタシの愛のレッスン––––」
「あああああ!!!なんでそっち持ってるんだよ!」
「えっ……?マネージャーに渡されたからですけど……」
「そっちは違う方!ナギにやり直しさせたやつは白のテープ!」
「えぇっ?!」
(間違い?!)
「おいナギ!白い方どうしたんだよ!」
「ありますよ?これでーす!」
「バカ野郎!!何得意気に出してるんだよ!!そっちを渡せって言ったじゃんか!!」
「OH……ですが愛のレッスン、に聴いてほし––––」
「ほしかった、じゃねぇよ!白いのよこせっ……!」
「NO!引っ張らないでっ!」
「は……ははは……」
(まさか違う方を聴いてたなんて……脱力感半端ない……)