第33章 32 Melody.
顔も声も完全に楽さんなのに、何故かお蕎麦屋さんの格好をしている人物が私の直ぐそこにいる。
TRIGGERの楽さん?
いや、山村って呼んでくれって言ってたし……違う人?
いやいや……百さんは楽って呼んでたし、その人の隣には十さんがいる。
じゃあやっぱり楽さん?
それとも山村さん?
もう訳がわからない。
「こんばんは、ちゃん」
「こ、こんばんは十さん……あのこれって……」
「ああ、お前には話してなかったな。俺よくこの店手伝ってんだ」
「え……?」
「ここ、おふくろの方のじいちゃんちなんだよ。まあもう離婚してっけどな」
結局この人は楽さんだった。
元々良い人だなとは思っていたけど、彼の話を聞いて益々好感度が上がる。
TRIGGERさんはいつも色んな場所に引っ張りだこなのに……合間を縫ってお手伝いをしているなんて、とても尊敬するし素敵だなと思う。
「ん?なんだよ、そんなに見つめて」
(えっ……私見ちゃってた?!)
「す、すみません!毎日忙しそうにしていらっしゃるのに、お店のお手伝いまでしているなんて凄いなと思ってただけで……!」
「もうかなり年だからな。……放っておけねぇんだ」
(うわっ……何その顔っ……)
おそらく……いや絶対に、世の中の楽さんファンが今の彼を見たら……もっともっと好きになると思う。
だって彼、笑ったんだ。
不安気に笑ったんだ。
心配そうにしてるけど……そこからおじいさんへの愛を感じ取れる。
楽さんは身内を大切にする、大切に出来る……素敵な男性だ。