第30章 29 Melody.〜天side〜
そして翌日、目を覚まして1番に感じたのは孤独だった。
昨夜はと一緒に、このベッドの上で沢山の幸せを噛み締めたけど……今いるのはボクだけ。
愛しい彼女の姿はどこにもない。
(キミがいないとベッドが広く感じる……)
ぼんやりと隣を眺めながら昨日のを思い出す。
すると不思議な事に、少しずつ彼女の姿が見えてきた。
甘く蕩けるも、可愛く笑うも、寂しそうに俯くもハッキリと見える。
(……)
でもそれは幻覚。
昨日確かに寮まで送ったんだから、実際にいるわけがない。
なのにボクの手は彼女に向かって伸びていく。
感じるはずのない温もりに触れたくて。
「っ……」
(消えた……)
だが当然触れられない。
虚しく伸ばした手を握り、朝から何をしてるんだって……ボクは呆れたように笑った。
それより早く支度して事務所に行かなければならない。
はオフだって言ってたけど……ボクは仕事なんだ。
(……ラビチャ?)
【おはよう。よく眠れた……?昨日はどうもありがとう。帰り際困らせちゃってごめん。今日はお仕事……?お休み……?わからないけど……ゆっくりしてね】
もし仕事だって言われてたら抱いてなかった。
ご飯を食べた後何もせずに帰してた。
睡眠時間を削ってでも一緒にいたいって思ったのはボクなんだから、余計な事を言わないように気をつけなければ。
じゃないとはきっと心配する。
ここは休みという事にしておこう。
【おはよう。こちらこそありがとう。もしっかり休んで】
ボクは今日仕事で、おまけにあまり寝ていないなんて事……は知らなくていい。