• テキストサイズ

【アイナナ/R18】Melody.【九条天】

第30章 29 Melody.〜天side〜




(……今のはキミが悪い)

「あ……んっ……」



もしかして誘ってる?


そうとしか思えない発言だった。

ただでさえ我慢していたというのに……「ずっとこうしてたい」なんて可愛い事を言われたらキスくらいしてしまう。



「っ……」

(……潤まないで。また抱きたくなる)
「けど帰らなきゃダメでしょう」

「うんっ……」

「送ってあげる」



なんとも微妙な雰囲気。
着替えを手伝う間、ボクもも黙ったままだった。


離れたくない。
離したくない。

帰りたくない。
帰したくない。


この沈黙がお互いの思ってる事を教え合ってるみたいだ。



(っ……引き止めるわけにはいかないでしょう)
「準備はいい?」

「……うん」

「行くよ」



ボクの少し後ろを歩く。
その足取りは重いし、おまけに鼻をすする音がする。


心配になって並んで歩いてみたけど……それでもは俯いたまま、自分で涙を拭い続けている。



(機会はまたある。いつか必ずね……)



笑ってくれるまで側に置いておきたい。
抱きしめながら頭を撫でて……いつまでも隣に置いておきたい。


と、本心じゃこう思う。


でもそうもいかない。
ボク達はそこら辺にいる普通のカップルとはわけが違うんだ。



(今だけこうしてあげる。だから泣かないで……)



玄関まであと少し。
扉を抜けたら……もう触れ合えない。


だったらせめて今だけでも……
数十メートルの間だけでも……


手を繋いでいよう……。


/ 395ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp