第29章 28 Melody.〜L〜
やっと……やっととキスする事が出来た。
しかしそれは一瞬だけで、直ぐにまた見つめ合う。
……先に離したのはこっちだけど、予想より遥かに柔らかかった彼女の唇が……ボクにそうさせたんだ。
(もう一度……)
けど今のじゃ満足出来ない。
もっとキミを感じさせて。
ボクをキミで満たして。
自分で離しておきながらまだを欲しがるボクは、彼女に吸い寄せられるように今一度頭を傾ける。
「ん、っ……」
だが再び重ね合わせても長くはない。
短くもしっとりとしたキスを……ボクは何度も繰り返した。
その度には精一杯受け止めてくれる。
少しずつ瞳に熱を宿らせてくれる。
真っ赤になってボクにしがみつく姿は……煽る要素としては充分すぎだ。
(ねぇ……もっとボクを受け入れて……)
「っ……!んんっ……!」
目の前にいるのは彼氏であるボク、九条天。
それを忘れないで。
と、に伝わるように想いを込めながら……ボクはそっと舌を伸ばした。
しかしわかりやすいほど身体を跳ねさせたは、侵入しないように口を固く閉じて拒んでいる。
(大丈夫だよ、怖くない……)