第29章 28 Melody.〜L〜
〝自分の身体の中に、自分以外の何かが侵入しようとしている〟
それが怖くて怖くて……私は反射的に口に力を込めた。
でも天は優しく抱きしめてくれる。
頬にあった手を腰に回して引き寄せてくれる。
またやってしまった……って、申し訳ない気持ちでいっぱいになったけど……
こうして天とくっ付いてると……だんだん安心してくる。
(開けて……みようかな……っ)
きっと……いや、少しでも隙を見せたらキスはもっと深くなる。
考えただけでも倒れそうなくらいの熱いものになる。
まだちょっとだけ怖いけど、天が全身で「大丈夫」って言ってくれている気がするから……私、信じてみようと思う。
彼に全てを捧げるつもりで……もう一歩だけ前に進んでみようと思う。
(あ……待って……っ)
なんてもたもたしているうちに唇を離されてしまった。
折角信じてみようと思ったのに、このままお終いにされるなんてそんなの嫌だったから……
視線と視線が絡み合う中で、私は心で彼にこう訴えた。
遅くなってごめんなさい……。
もう怖がらないから……ちゃんと受け止めるって約束するから……
だからお願い……やめないで……。
すると天は少しだけ微笑んでくれた。
声に出して言ってないのに笑ってくれた。
見た瞬間ドキッとして俯いてしまったけど……この人は許してくれなくて、また顎を取られてしまう。
「っ……」
(胸が痛いっ……)
天をこんなに近くで見るのはこれで何回目だろう。
彼の顔が近づいてくる光景を見るのはこれで何回目だろう。
もう自分の鼓動音しか聞こえない。
うるさいくらいに鳴り響く心臓の音しか聞こえない。
恥ずかしさや緊張が限界に達していて、今にも気を失ってしまいそうだけど……
「ぁ……んっ……」
ここで意識をなくしたら……大好きな天を感じられない……。