• テキストサイズ

【アイナナ/R18】Melody.【九条天】

第29章 28 Melody.〜L〜




天の顔が近づいてくる。


薄く開かれている目。
色気を放つ表情。
少しだけ開いてる唇。


いつか見た光景と重なるけど、今回は髪にゴミが……なんて事はない。
天は本気で、私の唇と重ね合わせようとしている。



(動……けない……)



彼の熱い眼差しに射抜かれて目をそらせなくて……私は今、まるで金縛りにあっているかのよう。

けどその間にも、彼との距離は確実に縮まっている。


天の薄く開かれている目が直ぐそこ。
色気を放つ表情をした顔が直ぐそこ。
少しだけ開いてる唇が直ぐそこ。


このまま私は目を閉じて……天に委ねるつもりだった。



「っ……!」
(イヤっ––––!)



しかし頭を後ろに下げてしまう。
ギリギリまで来て拒絶反応が現れてしまう。


〝何ってキスだよ……キミがあまりにも可愛いから……〟
〝おじさんね……可愛い子を見ると身体が疼いてしょうがなくなるんだ……〟


この部屋には私と天しかいない。
なのに耳元で言われたかのようにハッキリと、あいつの声がした。


やめて……。
もう出てこないで……!


居もしない相手に向かって心で叫び続ける私。
それは身体の震えとなって現れる。

繰り返し叫べば叫ぶ程、自分を見失っていくような感覚を覚えた。



「……怖い?」

「っ……」
(私っ……)



それに思い出してしまったのは……これがファーストキスではないって事。
カウントなんてしたくないけど、私は既に初キスを奪われている。


あんな奴にキスされたこの唇に天のを重ねさせたくない。
やっぱり自分は汚い……。


と、そんな考えで頭がいっぱいになっていく。



「私なんかとキスしたらっ……天まで汚れちゃう……っ」



しかもいっぱいになりすぎて、声に出して直接言ってしまった。
でも直ぐにハッとなって、恐る恐る彼の顔を見上げる。


しかしそこにはいつも通りの天がいるだけ。
怒ってると思ったのに、彼は表情を変えずにジッと私を見ていた。

それがまた怖かったんだけど……天はとても嬉しい言葉を私にプレゼントしてくれたんだ。



「好きな子とキスして汚れるわけないでしょう。そんな記憶……このボクが消してあげる」


/ 395ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp