第29章 28 Melody.〜L〜
ありがとう……。
今のボクはこれしか考えられない。
言おうとしてくれたあの日から結構日にちが経っていたから、もしかしたらもう言えなくなってしまったかもしれないって思ってたんだ。
……けどそんな事なかった。
はちゃんと聞かせてくれた。
ボクに向かって真っ直ぐ……。
(冷静を保つのに苦労する……)
正直嬉しすぎて……直ぐにでもキスしたいって思う。
でもそれじゃダメなんだ。
いくら大丈夫と言っても、心のどこかではまだ怖がっているはず。
自分の欲求のせいでまた振り出し……なんて事になったら流石に耐えられそうにない。
「……ありがとう」
「ううん……っ」
先ずはボク自身に慣れてもらおう。
腕の拘束を解かずに……暫くは抱きしめられててもらおう。
の身体は抱き心地が良いから、このままでもかなり幸せを感じる。
(……まだ微かに震えてる)
実は腕を引いて閉じ込めた時、は震えていた。
それよりはおさまっているものの……やはり簡単にはいかないようだ。
もで努力しているのか、時々力を入れている。
それでは逆効果だろう。
(力まないで)
だからボクは彼女の頭を撫でる。
そっと……まるでワレモノを扱うかのように。
すると徐々に震えが感じられなくなって、ボクの胸に頬を寄せてくるまでになった。
(ごめん……もう待てない)
……だけどそんな時間は長くは続かない。
とうとう限界に達したボクは少しだけ身体を離し……そして彼女の顎に指を添えた。
ゆっくりと見えてくるの顔は、それはもう見事な紅い色をしている。
(目を閉じて、……)