第28章 27 Melody.
(まだ帰りたくないな……)
食事を済ませ、後は帰るだけとなってしまったこの状況。
時計を見ると夜も結構遅かった。
でも帰りたくない。
もう少しだけ一緒にいたい。
そう思う私は……なかなか「帰るね」と言えずにいた。
「……行くよ」
「っ……ど、どこへ……?」
「とぼけないで。……送ってあげる」
しかし天は私を帰そうとする。
時間的に仕方のない事なのは承知してるけど、こうもアッサリと言われたら悲しい。
やだ……帰りたくない……。
って……声に出したら困らせるだけ。
だから私は彼にこう言った。
「ま、待って!えっと……てっ、天の部屋にスマホ忘れてきたみたい……!取ってくるね!」
やや小走りで部屋まで行って……天の香りでいっぱいのこの空間で1人、膝を抱える。
こんな事したってしょうがないのに……私の行動は幼稚すぎだ。
もう……どうしたらいいかわからない……。
(って、ずっとここにいるわけにもいかないか……戻ろう……)
「……何やってるの」
(?!いつの間に……)
「あ、いや……下の方を探し––––」
「……嘘」
「っ……嘘じゃないもん!」
「ならどうして泣きそうな顔をしてるの」
「っ……」
「……ボクが近くにいるのに、ボクの目の前で膝を抱えないで」