第3章 2 Melody.〜天side〜
「待って天にぃ……!」
「……ごめん陸。ボクは九条さんと一緒に行く」
それから約1年後。
結局とは会えないまま、ボクは七瀬という名前を捨てて九条となった。
両親が切り盛りしていたお店の経営悪化と陸の体調、そしてへの複雑な気持ち。
色々なものを抱えてきたボクにとってこの転機は……更に自分を追い詰める事になるんじゃないかと思った。
プロの世界を九条さんに見せてもらった時はとても感動して、心が晴れやかになった気がしたけど……
キミはあの伝説のゼロをこえる逸材だと九条さんに言われた瞬間、ボクはなんとも言えないプレッシャーを感じた。
この人の期待は底なしだ。
と。
「姉はどうするの?!天にぃあんなに心配してただろ?!」
「はもういい。あれだけ行っても会おうとしなかった……それが彼女の答えでしょう」
「そんな……!姉が話してくれるようになるまで2人で待とうって……忘れちゃったの……?」
(忘れてないよ。本当はそうしたかった)
「……」
「ねぇ天にぃ……天にぃはもう姉の事嫌いになった……?」
「さあ……どうだと思う?」
「どうって……今でも好きに決まってるよ……」
「……正解」
「天にぃ……」
「大好きだよ。……どうしようもないくらいにね」