第28章 27 Melody.
(いや、それより天に作らせるのは申し訳ない……)
「なっ、何がいい?!やっぱりオムライスかな……?!」
「ボクが作るって言ったでしょう」
「ダメ!!天はゆっくりしてて……!」
案内されるがままやって来たキッチンで交わす会話。
疲れてると思って言ったことだったけど……天も私も引かなくて、結局2人で作る事になった。
慣れないキッチンでアタフタする私。
それを見て柔らかく笑う天。
ついドキッとしながら見惚れてしまったせいか……私の指は包丁により見事赤く染まってしまう。
(やっちゃった……このままじゃ料理できないな……)
「……何してるの」
「なっ!なんでもない!えっと次は玉ねぎだよね……!」
「……」
(めっちゃ怪しまれてる……!早いとこバッグから絆創膏を……って、絆創膏持ってない!どうしよう……)
包丁で切っちゃいましたなんてドジ、知られたくない。
それに心配させたくないし、呆れられるのも嫌。
だから隠してたのに……彼は直ぐ気付いてしまう。
「……自分の指を食べるつもり?」
「っ……ち、違うよ……!これは……その……」
「ハァ……」
(た、ため息……っ)
予想通りというか……やっぱり天は呆れたような目でこっちを見てきた。
彼の冷めた瞳を見ると心が悲しくなるから、私はどこか適当な場所に視線を向ける。
すると天は無言で怪我した方の手に触れてきた。
びっくりしてつい引っ込めてしまったけど、彼の手からは逃げられなくて捕まってしまう。
一体なんだろうって、ビクビクしながら様子を伺っていると……
「あ……」
(う、そ……)
天は躊躇いもせず、傷を負った私の指に……
そっと唇を寄せた。