第21章 20 Melody.〜天side〜
ただお疲れ様って言っただけなのに、はボクにとびきりの笑顔を見せてくれた。
事務所に戻っても胸の辺りがまだくすぐったくて……MVなんて観れそうにない。
(可愛い……)
なんて言いつつボクの手には1枚のCDが。
帰り際どさくさに紛れて初回限定版を入手し、今ジャケを見ているのだが……それだけで惚気る辺り結構重症だなと我ながら思う。
でもこれは仕方ない。だって本当に可愛い。
ボクのお墨付き。
「セット出来たよ。観よう」
だがしかし、フワフワと穏やかな気持ちになっていたのはここまで。
龍の声で我に返ったボクは、勝手に羞恥心を抱いてしまう。
今ニヤけてないよね。
見られていたら面倒くさい。
って2人を警戒していると……
「わかるぜ天、可愛いよな」
「まだ残っててよかったね」
(……最悪)
ボクの様子に気づいたのか、この人達はワザとらしくからかってきた。
楽のニヤニヤが余計ムカつく。
龍の微笑みが逆にムカつく。
居心地悪いし恥ずかしいしで……ボクは口を軽く尖らせてそっぽを向いた。
「っ……うるさい」
「照れてる天も可愛いよ」
(……龍は何言ってるの)
「普段の顰めっ面からは想像出来ねぇよな」
(……楽は後で覚えといて)
「くだらない。早く流してよ」
「そんなに早く観てぇのか?」
「ほら天、真ん中おいで」
(……本当に嫌だ、この人達)