第20章 19 Melody.
(天っ……)
走り去る彼の車。
私は寮の前で1人、見えなくなるまで見続けた。
〝じゃあね〟
最後の最後で言った天の別れの挨拶が……夜の闇にいつまでも響いて聞こえる。
(じゃあね……か……)
「おっ、朝帰りじゃねーのか」
「えっ……大和さん?」
「待ってたぜ!」
「おかえりちゃん」
「三月さんに壮五さんまで……寝ていなかったんですか……?」
「まーな。お前さんが来るのを待ってた」
「どうして……」
「まあ話は後!とりあえず中入れって!」
「うん。サマフェスもあって疲れただろうしね」
腕時計を見ると深夜1時過ぎ。
明日……いや、今日も仕事があるはずなのに、どうして3人は起きて待っててくれたのだろう。
さっきの事は陸にしか言ってなかったのに……。
「はい、お茶だよ」
「ありがとうございます壮五さん……」
「まあ……その様子じゃ上手くいかなかったみたいだな」
(上手く……?)
「大和さん、それはどういう……」
「陸に聞いたんだ。姉は天にぃに会いに行ったって」
「っ……」
(もう陸っ……)
三月さんによると……ちょっと前まで陸も起きて待っていたそうだ。
でも体に障るからって、今彼は寝ている。
最初はずっと理由を言わなかったみたいで、誤魔化しながら起きてたそうだけど……流石に観念したのか全て話してくれたらしい。
〝オレ1番におめでとうって言ってあげたいんです!2人の事……ずっと応援してたから……〟