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【アイナナ/R18】Melody.【九条天】

第20章 19 Melody.




「……」

「……」
(何も喋ってくれない……)



あの後直ぐ身体を離した天。
「帰るよ」という一言を最後に、車の中でも一切口を開かなくなった。


全ては自分のせいだってわかってるけどとても寂しい。
好きだとお互い伝えあったのに……この沈黙が天との距離を感じさせる。



(嬉しかった……天に抱きしめられて好きだよって言われて嬉しかった……なのにっ……)



情けなく震えている自分の両手。

天となら大丈夫だと思ってたのに……今見ている手が「そんな事ない」って言ってる。
大好きな天を「怖い」と言ってる。


触れられても抱きしめられてもキスしても……そしていつかはその先も……彼となら大丈夫だと思ってた自分が甘かった……。



「っ……」

「……着いたよ」

「え……」
(ほんとだ……寮……)



行きは長く感じたのに、どうして帰りはこんなに早く感じるんだろう。
まだ着いてないと思いたいけど……小鳥遊事務所の寮が窓の外にちゃんとある。


微妙な雰囲気のまま別れたくない。
だからといって空気を変えられるほどの覚悟はまだ出来てない。


もう降りるしか選択肢はないのに……自分自身と戦っててなかなかドアを開けられない。



(どうしたらっ……)

「……降りなよ」

(それしかないってわかってるよ、でもっ……)
「天、私っ……」

「バッグ持って」

「っ……」
(早く帰れって事かな……だよね……)

「……じゃあね」


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