第17章 16 Melody.〜天side〜
「可愛いとこあるよなお前」と言う楽と
「いいえ」って微笑む龍。
さっきまで深刻な雰囲気の中にいたせいか、余計気恥ずかしくなってしょうがない。
「っ……ほら、さんのステージ観に行くよ」
「おい待てよ天!ったく……」
「ははっ、きっと照れてるんだよ」
ああもう言わなきゃ良かった。
そう思いながらステージ袖まで移動するボク。
見ると丁度トークが終わったみたいで、は1人で舞台の中央に立っていた。
打ち合わせでもリハでも通しでも……初めはデビュー曲を披露する予定だったから、ボクもそのつもりで開始を待つ。
けど流れてきたのは……しっとり落ち着くバラードだった。
「確か最初はデビュー曲だったよね……」
「ああ。スタッフ側のミスか?」
(いや、は動揺してない。ということは……)
「彼女に頼まれたんですよ。先にこっちを歌わせてくれって」
いきなり会話に入ってきたのは彼女のマネージャー。
はステージに上がる前、彼に交渉したらしい。
〝お願いします!新曲を先にやらせてください!〟
真っ直ぐを見つめる彼は「やれやれ」と言いつつも、とても優しげな顔をしている。
「どうしても今がいいって聞かなくて……調整するの苦労しました」
「でもなんでだよ。どうせ後で歌うだろ」
「さあ……そこまでは聞いていませんが」
「最後まで聴けばわかるんじゃない?」
「最後までですか……そうですね。九条さんの言う通り今は聴きましょう、さんの歌を……」