第17章 16 Melody.〜天side〜
暗くした照明
だけに当たるスポットライト
客席でゆらゆらと揺れるサイリウム。
そんな幻想的な光景の中で、胸に手を当てながら丁寧に心を込めて歌っていくに……ボクは二度目の恋をした。
(……)
鼻にかかった声
泣き腫らした瞼
赤い目
と、今のはアイドルとはかけ離れた姿を晒している。
でもボクにはどれもこれも綺麗に見えてしょうがなかった。
それに雰囲気がとても大人っぽくて……彼女が口を動かす度に身体が騒つく。
(……、キミを––––)
抱きしめたい––––。
そんな衝動が身体を包み込む。
怖がらせてしまうのはわかってるけど……もう抑えつけておくのは難しかった。
頭に少し触れただけでは足りない。
キミを全身で感じさせてほしい。
ボクの身体が……心が……を欲しがってる。
「……ねぇ」
「あ?なんだよ。真剣に聴いてたんじゃねぇのか?」
「……手が震える」
「は?何言ってんだ」
「手が震えて止まらない……」
を腕に抱いたらこの震えはおさまるだろう。
でも直ぐには出来ないからこうして我慢してるんだ。
なのに心が「早く」って急かしてくる。
早くを攫いたい。
早く想いを伝えたい。
早く抱きしめたい。
そう急かしてくる……。
◆16 Melody.END◆