第2章 1 Melody.
(行ったかな……)
やがて声が聞こえなくなり、その場から顔を覗かせてみる。
そこには誰もいなくて……私はホッと息を吐いた。
……いや、また近くに来るかもしれない。
会っても普段通りに接する自信が全くなかったから……自分にはもう逃げるしかなかった。
(着いた……服変じゃないかな……)
そして周囲に神経を張り巡らせながらなんとか家に到着。
だが入る前に最終確認だ。
自分の身なりがおかしくないかチェックした後、なるべくいつものテンションで玄関のドアを開ける。
話せば警察沙汰になるし、何より親に心配かけたくなかったから。
「あらおかえり。随分と早いわね」
「う、うん……!やっぱり今日はナシになったんだ……!」
「あらどうして?」
(うっ……わ、話題を変えなきゃ……っ)
「えっと……そ、それよりお母さん」
「ん?」
「お願いがあるんだけど……いい?」
これを言ったら怪しまれるってわかってた。
でも暫くはあの2人とは会えない。
だから私は「天と陸が来ても家には入れないで」と言った。
きっと訪ねてくると思ったから。
「どうしたの急に」
「お願いお母さん……!」
「もしかして天くんと何かあったの?あなた好きなんでしょ?」
「っ……だからこそだよ」
「本当は喧嘩でもしてきたのね?」
「まあ……そんなとこ」
「わかったわ。もし来たら言っといてあげる」
「あ……ありがとうお母さん……!」