第13章 12 Melody.〜天side〜
と思ってはいても仕事はキチンとこなす。
「ハァッ……みんなありがとう!!」
「きゃー!!天様ー!!」
夕方から入っていたのは生放送の音楽番組で、大きな会場でやるようなライブより早く終わった。
歌って踊っている間はファンに全てを捧げているけど……1歩ステージから遠ざかれば、心の中はでいっぱいになる。
(……出ない)
「誰に電話してんだよ」
「楽には関係ないでしょう」
「……まあそうだけどよ」
(陸……)
がどうなったのか心配で陸にコールしてみたが不発。
まだ仕事をしているのか……それとも深刻な状態になってしまっているのか。
どちらにせよ、ボクに出来る事は何もない。
今はまだ……。
「お疲れ様。いいパフォーマンスだったわよ」
「……いえ」
「なーに天、不満そうね」
「……すみません、少し1人にしてください」
ライトが輝くステージにあがれば……当然ファンの為に尽くす。
ファンの為に歌い、ファンの為に踊り……
ファンの為に笑顔を見せ、ファンの為に楽しいひと時を作り上げる。
それがボク達アイドルの役目だから。
でも今日は違う。
衣装を着てマイク持っても……ステージに上がらない限り、ボクはずっとの事を考えていた。
いつもなら直ぐ切り替えられていたのに。