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【アイナナ/R18】Melody.【九条天】

第2章 1 Melody.




「あれは6年前……私が陸達の家に向かってた時に起きました……」




(早く会いたいなぁ……!急ごう!)



当時13歳。

陸が一時退院の許可を貰ったと聞いて、私は彼の大好きなドーナツを抱えながら歩いていた。
天もいるからって子供なりにおしゃれをして。


いつもはあまり着ないワンピース。
髪はサイドを編み込み。


陸の一時退院で家に行くのにおかしいかもしれないけど、ちょっとでも天に可愛いと思われたかったから。



(あ、でも走ったら髪が崩れそう……)



もう完全に恋する乙女だった。
「可愛い」って天が言ってくれるのを勝手に想像しては照れたり。


だって言われたいでしょ?好きな人からは特に。
聞くと嬉しくなってドキドキして……まるで魔法にかかったみたいになる。



(言ってくれるといいな……)



道の途中で身なりを整えては歩き、整えては歩き……
そう繰り返しているうちに、約束の時間ギリギリになってしまった。


でも恋をしていると何もかもが楽しく感じる。

時間が押してても、急がなきゃって髪を押さえながら小走りになるのも……全部。



(もう少しだ……!陸、どんな感じかな)
「きゃっ……!」

「おっと……」

「あ……すみません!ぶつかってしまって……」

「いやいいけど……へぇ……」

(な、何……?)



けどウキウキな気分はここまでだった。

ぶつかってしまったこの人は中年のおじさんくらいで……私を舐めるように見ながらニヤニヤする。


なんだか気持ち悪くなった私は、もう一度頭を下げてからこの場を立ち去ろうとした。


でも……



「待ってよ……」

「はっ、離してください……!」

「そう急がなくていいだろう……?ちょっとおじさんに付き合ってよ……」

(えっ……連れて行かれる……!)
「イヤっ……!」



おじさんは私を行かせてはくれなかったーー。


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