第11章 10 Melody.〜天side〜
「天、今あいつになんて言ったんだ?」
「さあね。当ててみなよ」
「後で説教だよ。とか」
「……やっぱり帰りは楽の番」
「そんな番ねぇよ!」
、歌ってーー。
声には出さず、ボクはただの口パクで伝えた。
それはちゃんと通じたようで……こっちに向かって小さく頷いてくれる。
インカムを調整し直し、困惑していたスタッフに「大丈夫です。流してください」と言えるくらいにまで正気を取り戻したようだ。
(良い顔)
「やっとだ……!どんな曲かな?」
「あのセットからして俺らとは違うな」
「あっ、楽!天!イントロだ!」
「ほらな、全然違う」
ボクの予想通り、のデビュー曲はとても可愛らしいものだった。
パフォーマンスも初めてにしては堂々としてるから、見ていてハラハラしない。
けど……
「っ……」
(……何今の)
サビに「Kiss me」って歌詞があるのだが……それに合わせて、彼女は唇に指を当てながらウインクしてきた。
振りだとわかっていても、バッチリ視線が合った状態でやられたらたまらない。
折角落ち着いてきたドキドキがまた……。
「可愛いね!ちゃんにピッタリだ!」
「つかさっきから何興奮してんだよ」
「えっ?あっ、いや……ははは、つい……」
「まあでも安心した。あいつ……凄く楽しそうだ」