第11章 10 Melody.〜天side〜
いよいよ始まるの初ステージ。
キミにはまだアドリブが使えるとは思えない。だから失敗しないで。
成功を祈ってる。
そう思いながら、別セットへと移動していくを目で追いかけた。
(……頑張って)
用意されたステージの中央で、覚悟を決めたように顔を上げる。
いい感じに集中してる。
だからボクなんて視界に入らないだろうと思ってた。
「っ……」
(……目が合った)
なのには真っ直ぐこちらに視線を向ける。
ボクを見た瞬間彼女の目は見開かれ……そしてピクリとも動かなくなってしまった。
何も知らせずに来たのだから、当然といえば当然の反応だ。
「どうしたのかな……そろそろイントロが流れるんじゃ……」
(……、今は仕事中でしょう。切り替えて)
「これは撮り直しだな」
切り替えてなんて、そんなの冷静に思えるわけがない。
本当は凄くドキドキしてる。
と目が合った時からずっと。
……だってしょうがないでしょう。
好きな子と視線が繋がればボクだって胸が高鳴る。
「まっ、生じゃないだけよかったんじゃねぇか?」
「そうだね。生だと取り返しつかないから」
「……龍がそれ言うとなんかエロいな」
「そ、それってなんだ?」
「生」
「え?!」
でもこのままずっと硬直状態でいるのはダメだ。
曲が始まればが主役。
なのに肝心の主役がこれじゃ話にならない。
……とはいえ、キミをそんな状態にさせたのはこのボクだ。
もし来ていなかったら、はきちんと仕事をこなしていただろう。
(……ねぇ、)
いきなり来てごめん。
本当はこんなはずじゃなかった。
けどもう仕方ない。
、キミの歌を聴かせて。
キミのダンスを見せて。
そしてボクを……今よりもっと夢中にさせて。
声に出さなきゃ伝わらないかもしれない。
でもならわかるでしょう。
ボクの期待を裏切らないで。
キミなら出来る。
〝、歌って〟