第2章 1 Melody.
やはり隠しておく事は無理そうだ。
けど説明するには過去の記憶をまた掘りかえさなきゃならない。
泣きながら社長さんに話した事を思い返すと……いくら陸相手でも、もう記憶の蓋は開けたくないって思う。
「……無理」
「ど、どうして……?」
「無理なの……っ」
「天にぃも心配してたんだよ……?!勿論オレだって……!」
「やめてっ……」
「姉……!!」
「もうやめてよ!!私がどれだけ辛い思いをしたか何も知らないくせに!!……あっ……」
「っ……」
ハッとした。
陸がとても悲しそうな顔をしている。
……いや、悔しいのかもしれない。
目を伏せて、キツく唇を噛んでいる。
怒鳴り散らしたって仕方ないのに……陸は何も悪くないのに……私はなんて酷い事を言ってしまったんだろう。
「あ……ご、ごめんね……」
「……いいんだ。確かに何も知らないから……」
「陸……」
「でもオレって……姉にとったらまだまだ頼りないんだね……」
「……あ」
幼かった頃は私と天でよく彼の面倒をみていた。
その時、陸にこう言われた事がある。
〝オレがもっと大きくなって強くなったら……今度は姉がオレを頼ってね〟
「いつも面倒をみてくれているから、いつか恩返ししたいんだ」とも言っていた。
忘れていたわけじゃないけど……今の陸を見ていると、なんだか無性に心が痛む。