第2章 1 Melody.
「さんがお上手だからですよ……!」
「え……?どういう事?紡ちゃん」
「あれは 僕の目に狂いはなかった って顔してます……!」
「そ、そうなの……?」
「はい!私もさんの歌声に酔いしれちゃいました!」
私の素朴な疑問を感じ取ったのか、紡ちゃんがコソコソと耳打ちで教えてくれた。
それにしてもみんなして「すげー!」とか「上手い」とか言ってくれているけど……当の本人はあまり素直に受け止められなくて戸惑う。
私の歌を褒めてくれたのは、今までで天と陸だけだったから。
(まああの頃は子供だったし、童謡とかその辺だったけど……)
「姉!!」
「陸……?」
「来たよ!天にぃから返事!!」
「……え」
「ほら!!」
「って歌上手いね」って、昔天が言ってくれたっけ……。
とか思ってた時に、陸がまたもやスマホの画面を見せてきた。
そこにはこう書かれている。
【陸、今日はエイプリルフールじゃないよ】
【その嘘笑えない】
機械が作り出す文字だからか余計文面が冷たく見えて……心がズキッと痛む。
(嘘……か……)
「でも酷いよね。嘘じゃないのに」
「仕方ないよ……」
「そういえば姉……どうしてあの時から会おうとしてくれなかったの……?」
「っ……」
「どうしていきなり引っ越したの……?」
「それは……」
「今ならその訳……話してくれる……?」