第10章 9 Melody.
「さん!ちゃんとアイマスクをして!チラ見禁止ですよ!!」
「は、はい!」
「もう一度マッサージ機を使って!!」
「はっ、はい!」
「のど飴食べましたか?!ずっと歌っていたんですから喉を大事にして!!」
「なめへまふ……!」
マネージャーが用意してくれた車の後部座席には、様々な癒しグッズが大量に積み込まれていた。
私は彼の言う通りにしながらも「これ今使うようなやつじゃないよね……」と思う。
アイマスクとかしてたら逆に眠くなっちゃう。
(早く着かないかな……)
「さん!!」
「?!はいっ!!」
(ていうかこの人……こんなキャラだったっけ)
「もう直ぐ着くので少し音をとってみてください!声の調子を確かめますから!」
(えっと……何か歌ってみればいいのかな……)
「ドーレーミー……」
「うん、大丈夫ですね。よかった……」
と、凄くホッとしたような声で言うマネージャー。
どうしてここまでしてくれたのか理由を尋ねてみると、彼は「あなたを大スターにするのがおれの役目です。出だしから失敗なんてさせたくなかった」と答えてくれた。
それを聞いて胸が熱くなる。
嬉しくて泣きそう。
「泣かないで!!鼻声になりますから!!」
(バックミラーで見られてた……!)
「はっ、はい!!」