第9章 8 Melody.〜天side〜
行かないでーー。
そう伝えた後、ボクはの手を強く引いた。
もう何処にも行かないようにと……腕を広げて抱きしめようとする。
けど彼女の背中に腕を回した瞬間、の姿は光とともに消えてしまった。
残っているのは引き寄せた時の感触だけ。
「……?陸……?」
辺りを見回すと陸の姿もない。
それどころか部屋ごと消え失せていて……世界は真っ白だ。
右を見ても左を見ても……前を向いても後ろを向いても……ここにはもうボク以外何もない。
(……夢でもこうなるの)
一体どこまでボクを苦しめれば気が済むのか。
夢くらいと……陸と一緒にいたってバチは当たらないのに。
(……起きて、ボク)
こんな所で1人にされるなら早く目を覚ましたい。
360度白い景色しかないのは狂いそうになる。
多分本体は明日の準備をしないまま、机かなにかに伏せて寝ているはずだ。
ここから呼びかけたって意味はないだろうけど……他に方法が思いつかない。
(起きなよ。キミだってこんな夢見たくないでしょう)
けどなかなか状況が変わらない。現実のボクは熟睡してしまっているのだろうか。
……だとしたらお手上げ。
こっちからは何をしても無駄だ。