第9章 8 Melody.〜天side〜
「ん……」
打つ手なし。
諦めたボクは、暫くあの白い世界で自分が起きるのを待った。
するとどこからかスマホの着信音が聞こえて……そのおかげでやっと現実世界へと帰還。
仕事の話かもしれないと考えると、いくら眠ってても強制的に起きるのがボクだ。
「何?」
「おい、良い知らせだ」
(……悪い知らせの間違いじゃないの)
相手は楽。
何かを見ながらかけているのか、カサカサと紙が擦れるような音がする。
……時間を見ればもう深夜。
こんな夜更けにかけてくるなんてどうかしてる。
聞く価値のある内容じゃないと怒るよ。
「明日の昼間、時間に少し余裕があった」
「……は?」
(説教確定)
「だから、少しはフリーになれる時間があるって言ってんだよ」
「意味がわからない。ハッキリ言って」
「ったく……見に行くぞ、収録」
つまり楽は……が出る番組の収録を見に行くと言っている。
こっちの気も知らないで堂々と。
今行ったって逃げられるのが落ちだ。
「……行かない」
「んでだよ。会いたくねぇのか?」
「そんなとこ」
(……嘘つき)
「見てやれよ。幼馴染だろ?」
「……テレビでみればいいでしょう」
「ったくお前は……ならいい、この話は終わりだ」
「そう」
「ああ。じゃあな」
「……」
(……切れた)
なんか納得いかない。
どうしてこんなにアッサリと電話を切ったのだろう。
もっとしつこく言ってくると思っていたのに。
きっと何かを企んでるんだろうけど……ボクには通じないよ。
警戒しておくから。
(さあ……どう出てくる?八乙女ジュニア)
◆8 Melody.END◆