第5章 雨催い
風呂場から前田達が戻ると、鶴丸はタイミングよくまた俺の元へ戻ってきた。どうやらずっと、前田を待っていたらしい。
戻ってきた前田は、どこかスッキリした面持ちだ。
「お風呂はどうだった?」
尋ねると、前田は血色のよくなった頬を緩めて答えた。
「気持ちよかったです。なんだか体が軽くなった気がします」
笑うとどこか固い印象だったものが、柔らかく、子供っぽいものに変わる。彼と接して初めて見た笑みに、心に温かいものが灯る。よかった。安堵に、無意識に入っていた力が抜けた。
「前田、」
不意に、前田の後ろから静かな声がする。骨喰だ。前田は正しくその声の正体に気付くと、びくりと身体が揺らした。
でも、逃げなかった。
罪の意識を取っ払って、絡まったものをほどこう。一度、前田と話してみないか?
それが、先ほど俺が骨喰にした提案だった。骨喰は少し考えてから、強く頷いた。
そして、いま、その瞬間がやってきたのだ。
どうか、どうか。彼らの関係が、良い方向へ向かいますように。