第5章 雨催い
鶴丸の提案通り、風呂は乱と薬研が共に入ることになった。前田を見送り、俺はそのまま食器を片つけるため前田の部屋へと戻る。お盆に乗せ、空になった食器を広間の隣にある台所へ運んだ。
台所では、御手杵と燭台切が丁度食器を洗っているところだった。どうやら他の刀剣男士たちも食べ終わったようだ。
「お、審神者じゃねーか」
俺の存在に気付いた御手杵が声をかける。御手杵の横にいる燭台切はまるで俺が見えていないかのように振舞うが、彼のそんな態度にもそろそろ慣れてきた。
「前田のやつどうだった?」
御手杵が手を止め、尋ねる。俺は食器を御手杵に見せ、笑みを浮かべた。
「全部食べたよ。おいしいってさ」
「おー、よかった。歌仙と骨喰が喜ぶなぁ」
「食器、お願いしていいか?」
「おう。お安い御用だぜ」
御手杵は、俺の手からお盆を受け取ると、食器を流しに置いた。それから、広間の方を指さして言う。
「二人ならあっちにいるぞ」
「ありがとう」
教えてもらった通り、広間へ足を運ぶとそこには歌仙と骨喰がいた。どこか落ち着かない様子を見るに、前田が食事をとったか気にしているのだろう。
俺は二人に声をかけ、前田が完食したことを伝える。
「そうか。それはよかった」
歌仙はあからさまにほっとした様子で、胸を撫で下ろした。その隣で骨喰が同じように肩から力を抜く。
「……前田が、少しでも前に進めたなら、それでいい」
小さな声で、骨喰がつぶやく。その表情からは確かに情が滲んでいて、俺は一つ提案する。