第5章 雨催い
「食べ終わったら、風呂だ」
前田が完食したのを見届けると、今度は彼を風呂へ誘う。前田は先ほどより無防備に首を傾げ、こちらを見つめた。
「まさか君も入るつもりじゃないだろうな」
またもや、隣にいる鶴丸がため息を吐き釘をさしてくる。自分も入るつもりだった俺は鶴丸に聞き返した。
「え?だめなの?」
「言っておくが、信用は少しもないからな」
じっとりと俺を見る鶴丸に、思わず肩を竦める。
「なら、鶴丸が一緒に入ってくれる?」
仕方がない、と譲歩してみれば、けれど鶴丸はそれもどうやら気に食わなかったらしい。もう一度大きなため息を吐いて視線を俺から外した。
少しの間をおいて、前田を見つめながら言う。
「……俺より適任がいるだろう」
適任。適任……、少し考え込んでから、頭の中に浮かんだのは薬研と乱だった。
「ああ、確かに」