第5章 雨催い
骨喰が顕現した。審神者は、骨喰の姿を一目見た途端直ぐに出陣を命じた。何とか帰ってきた骨喰であったが、中傷を負っていた。手入れされることはなく、それでもなお凛と佇む骨喰を、前田は兄として尊敬していた。
傷だらけであっても、骨喰は美しかった。顔の造形もあったが、何よりその生き様が美しいと思った。
骨喰のような、強い刀でありたい。それは、心の強さをも指していた。
このころにもなると、一期は審神者の兄弟への態度に思うことがあったのか、距離をとるようになった。
「一兄、主君のもとへ行かなくてよいのですか?」
一期は夜、よく審神者のもとへ行っていた。けれど、最近はめっきりなくなったように思う。一期は優しく微笑んで言った。
「ああ。私は、お前たちが大事だからね」
おおきな掌で頭を撫でられ、うれしくなる。主君のことは、嫌いではない。たとえどんな扱いをされても、短刀はその性質上、審神者を嫌いになることはほとんどなかった。けれど、主君よりもずっと、骨喰や一期のことが好きで、大切だった。
粟田口の数が減り、兄弟が三振りだけになったのも原因の一つかもしれない。
一期は前田や骨喰と過ごす時間を増やし、大切にしてくれていた。