第5章 雨催い
一期一振は、中でもかなり気に入られていたという。時々癇癪をおかし、手がつけられなくなる審神者であったが、一期の言うことはよく聞いていた。
けれど、だからこそ、一期一振が気にかけ、大切に扱っていた粟田口の短刀のことが審神者は気に入らなかった。
前田の知る限りではあるが、言葉で傷つけられた兄弟もいれば、実際手を挙げられた兄弟、挙句の果てに時空の狭間に置き去りにされた兄弟もいた。それでも、前田を含め、粟田口の短刀は審神者に恨み言ひとつ言わなかった。
どんな人間であれ、審神者であれ、主だからである。