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夜明け

第1章 暁闇


 
「傲慢だよなぁ」

 声が聞こえてはっとする。沈黙をやぶり落ちた声は、先ほどとは違うものだった。

「知ってるか、人間。傲慢とは、神にのみ許されたものなんだぜ」

 挑発、しかし嫌悪は見られない。障子にうつる影に、思わずこんのすけを後ろに隠す。
 間もなく音を立て開けられる障子。現れたのは、全身を白に包んだ神だった。たしか、名を鶴丸国永といったか。

「はっ、結界まではって、大層なこった」
「俺は自分の命を軽んじる気はない。身を守るのは当たり前だと思うが」
「ふぅん…」

 じろり。上から下まで舐められるように見下ろされる。その間にも、刀から手が離れることはない。

「君は、ずいぶんつまらん物言いをするんだな」
「鶴丸」
「…はいはい、引っ込んでるよ」

 鶴丸国永の奥。薄暗い部屋の中に浮かび上がる姿は4つ。頭の中の記憶と照らし合わせる。
 たしか、三日月宗近、歌仙兼定、鶯丸、石切丸だ。はっきりとは見えないが、その奥にも4つの気配。敵意や嫌悪感はあるが、強い殺意は感じない。穢れもほとんど感じないし、神気の揺らぎも少ない。
 ここに集まっているものたちは、比較的まとも、あるいは神気の高いものたちなのだろう。

 それよりもこの部屋の奥、そこから強い穢れと殺意を感じる。思わず、眉を顰めるほどには。

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