第4章 玉蜻
目を覚ました骨喰は、決して口数の多い刀ではなかった。けれど視線は常に何かを、誰かを探していた。
「…傷は、どうだ?」
尋ねれば、骨喰はその大きな瞳でこちらをじっと見つめた後、ふいと視線を逸らし答えた。
「問題ない」
「そうか、ならよかった」
誰を探しているのか、聞くのはなんだか躊躇われた。
「お前が、新しい主か?」
平坦で静かな声で問われる。なまじ顔が整っているだけあって、妙な迫力があった。
「主ではないんだ」
「こやつはただの審神者よ。主など、もういるまい」
三日月はすべてを拒否するかのように言った。骨喰はその言葉に同意するでも否定するでもなく、ただ事実を淡々と述べていく。
「だが、審神者がいなければ傷は直らない」
それは最もなことである。ただ、正しいことが良いこととは限らない。三日月は骨喰の言葉に何も言えず、黙り込んだ。
「審神者でも、なんでも、好きに読んでくれて構わない。じゃあ、俺はこれで失礼するよ」
気まずさに耐えられず部屋を出る。重傷者も、後一人となっていた。