第4章 玉蜻
「ああ、そんなところだ。包帯をとってもいいか?」
尋ねると、御手杵は一つ返事をした。手や足など自分でとれそうなところは彼に、頭や顔に貼っているガーゼは俺がとっていく。途中、御手杵が「くすぐってぇ」と笑うもんだから、あっさりいくはずが存外時間がかかった。
「うん、これなら大丈夫そうだな」
包帯をほどくと、そこにはきれいな肌があった。傷跡一つもなく、自分の手入れに満足する。
「ありがとう、助かったぜ…あー、」
御手杵はそういうと、少し迷ってから付け足した。
「主、でいいのか?」
主。ここへきて初めて呼ばれたその呼び名に、心がほんのりあったかくなる。同時に、切なくもなった。だって、俺はこの本丸の立て直しが終われば、出て行く身だ。
すかさず、歌仙が訂正する。
「御手杵、彼は主ではないんだ」
「ん?そうなのか?でも、この本丸にいるんだよな?」
「…君が眠っている間にも色々あったのさ。詳しくはまた話すよ」
「ふーん。難しい話は俺にゃ分かんねぇけど、歌仙が言うならそうか」
納得したように頷いた御手杵は、もう一度ふにゃりと気の抜けた顔で笑うと、手を差し出してきた。
「まぁ、あんたに手入れしてもらった恩は忘れねぇよ。刺すことしかできねぇが、必要なときはいつでも言ってくれ」