第4章 玉蜻
数時間もすれば、手入れは終わった。槍の状態は元通りに。御手杵の傷…は、包帯をとってみないと分からないが、元に戻っているはずだ。
「御手杵」
名を呼ぶ。ふるり、と瞼が震えた。
ゆっくりと開かれると、茶褐色の瞳がゆらゆら揺れる。
「御手杵」
今度は歌仙が。御手杵の目覚めを、俺の傍でずっと待っていた彼は、緊張で震える声で彼の名を呼んだ。
「ん……」
右。左。瞳が動いて、少しずつ光を灯す。
あ。
茶褐色の瞳が、大きく開かれる。ぱちぱちと何度かの瞬きののち、彼は突然、がばりと体を起こした。
「ん?!直ってる…!」
自らの手両手を見、その後で横に置いた槍を手に取って撫でた。
彼が無事目を覚ましたことに、ほっと安堵する。方から力が抜け、その場に倒れこみたくなるのをぐっと堪えた。
「御手杵、」
歌仙がもう一度彼を呼ぶ。御手杵は歌仙の方を見ると、その顔を少年のように輝かせ笑んだ。
「歌仙!なんだか久しぶりな感じがするなぁ」
「よかった。傷の具合はどうだい?」
「おう!すっかりだぜ!あ、あんたが直してくれたのか?」
御手杵は歌仙の隣に座る俺に目を移すと、首をこてりと傾げて尋ねた。その仕草が子供っぽくて、思わず俺からも笑みが零れる。なんというか、警戒心を持たせないのがうまい。