第4章 玉蜻
歌仙に案内され、御手杵の部屋に通された。
「ここだよ」
部屋の中には、私物らしいものは何一つ見つけられなかった。置いてあるのは、机と敷かれている布団だけだ。それが、彼の顕現してからの生活の短さを物語っていた。
敷かれている布団の上には、傷だらけの御手杵が横たわっていた。布団から出ているところには包帯が巻かれている。包帯の状態から、頻繁に変えられていることが察せられる。
「この手当は?」
「薬研さ。彼は本当によくやってくれているよ、…でも、手入れは君たち審神者にしかできない」
後半の言葉には悔しさが滲んでいた。
「彼を手入れに運ぶことは?」
尋ねれば、歌仙は首を横に振る。できないということだろう。
「槍の状態がよくない。少しでも動かせば、折れてしまいそうなんだ」
言われて見れば、彼の横に並べてある槍の状態は、確かによくなかった。あちこちにひびが入り、鉄が欠けているのが見て取れる。
「なら、時間はかかるけどここで行うしかないな」
「すまないね」
「謝らないでくれ。こういうとき、俺は謝られるより、感謝されたい」
歌仙にそう言えば、謝ることが身に染みているだろう彼は、また「すまない」と口にする。これは時間がかかりそうだ。