第4章 玉蜻
鶴丸の瞳と目があって、わずかにたじろいだ。その隙を見逃さなかった。
両足はちゃんとある。地面についている。手を動かせば、指はちゃんと動く。首筋を抑えているほうだって、感覚はある。
だいじょうぶ、全部俺のもとにある。
緊張から戻ってきた体を味方につけ、もう一度、今度ははっきりと言う。
「この本丸を立て直す。俺のやるべきことで、したいことだ」
鶴丸は僅かに瞠目したあと、心底嫌そうな顔をして、今度は俺の顔を片手でガッと掴んだ。
「それで?だから好きにさせろってか?」
「誰もそんなことは言ってない。そのための契約だって結んでいる」
鶴丸が反論する。
「そんなもの大した枷にはならんさ。契約があるからなんだ?君が俺たちに危害を加えない保証などにはなりはしない」
「何でそう思うんだ。実際、今まで俺がお前たちに危害を加えたか?」
「今はまださ。だがそれがどうした。人間は変わる生き物だ。嘘をつく生き物だ。たかが数週間、優しくしたから信じろって?」
「信じることを強要はしていない。ただ、俺一人ではこの本丸を立て直すことはできない。だから、刀剣男士に頼ることだってある」
同じ熱量で言葉を重ね、返せば鶴丸はぐっと言葉に詰まった。視線は外さない。外してはいけない。
「……鶴丸、お前の協力が必要だ」
これは本心である。環境だけが整っても意味がない。一部の刀だけが回復しても意味がない。時間がかかっても、全ての刀と対話し、その蟠りをひも解いていく必要がある。