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夜明け

第4章 玉蜻



 石切丸には二つ返事で了承をもらい、小夜の方には歌仙から行くとの申し出があった。なんでも、小夜は俺と顔を合わせたくないらしい。
 分かってはいたが、地味にへこむ。

 そして、あとはいよいよ鶴丸国永だけだ。
 どうするか悩んだ末、結界は張らないことにした。また嫌味を言われるのもなんだし、それを理由に断れたらたまらない。さすがに初日のような切りかかる真似はしてこないはずだと、信じたい。

 歌仙に鶴丸の部屋を訪ね、向かう。鶴丸の部屋は離れから近い場所にあった。
 
 鶴丸国永は、穢れを纏っていない。あれだけ人間を目の敵にしていれば穢れていても、堕ちかけていても何ら不思議ではないのに、だ。
 それは、彼が人間をどうこうすることに対して一切の罪悪感を抱かないことを意味している。ある意味で、神様らしいといえば神様らしい。そういうところは、鶯丸と似ているなと思う。

 あと数歩で鶴丸の部屋、だというときである。後ろに気配。振り向こうとして、首筋にあてられた冷たいそれに寸でのところで思いとどまった。
 冷や汗がどぱっと出る。背中を伝って気持ち悪い。突然速くなった鼓動に、全身を駆け巡る血液。耳の奥で脈打つ音が聞こえる。

 声を発そうと動かせば、首筋にあてられた鉄の塊が肉に埋まるのが分かった。ひり、とどこか火傷を思わせる熱さに、恐怖が頭の中を支配する。

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