• テキストサイズ

夜明け

第4章 玉蜻



「実は、出陣をお願いしたいんだ」
「おう、いいぜ!」

 あっさり。
 薬研は迷うそぶりを全く見せず、間も開けず返事をした。その勢いに、拍子抜けする。引き受けてくれるだろうとは思っていたが、まさかこうも簡単にいくとは。

「い、いいのか?」
「いいぜ。俺っちも戦場に出たいと思ってたところだしな」
「ちなみに練度を聞きたいんだが、分かるか?」
「練度…?分からんが、戦場に出たのは数える程度だ」

 なるほど。部隊内の練度はかなりの差があるのか。指揮は三日月が執るといっていたから大丈夫だとは思うが、念のためお守りは持たせておいた方がいいな。
 頭の中で考えていれば、それをどう受け取ったのか、薬研が笑う。

「いやぁ、恥ずかしい話、俺っちが顕現したのはこの本丸の中では割と最近でな。戦場に出るよりも、仲間を手当することの方が多かったんだ」
「あっ、だからその恰好…?」
「おう。なかなかだろ?」
「似合っててびっくりした。というか、薬研は手当てができるんだな」

 手当てができるものがいたのならば、痛みもほんの少しは和らいでいたのだろうか。むき出しの傷口では、眠ることも難しかっただろう。

「見よう見まねだから、大したことは何も。手当てを受け入れてくれねぇ刀もいたしなぁ…」
「でも、きっと、薬研に助けられた刀はいたよ」

 間髪入れずに言えば、薬研は驚いたように目を見開いた。それから、少し照れくさそうに笑った。

 
/ 142ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp