第4章 玉蜻
「…俺が来た日、様子を見に来てたのは薬研だよな?」
本題に入る前に、気になっていたことを聞く。ほとんど確信は得ていたが、本人の性格から考えるとなぜ今日まで関わりがなかったのか、少しばかり疑問だった。
「あー…、ばれてたか。お前さん、気配を探るのがうまいなぁ。いや、俺っちが下手なのか?」
「気にしないでくれ。癖なんだ」
「ふーん、それは、中のお方に関係するのか?」
「そんなところだな」
薬研は俺の答えに納得がいったようで、俺がこの本丸に来た日のことを教えてくれる。
「俺っちの兄弟に乱藤四郎ってのがいるんだが、」
「たしか、この本丸にもいるんだよな?」
「そうだ。乱のやつが見に行くって聞かなくってな…。そういう割に、姿を見せるのは緊張するだの何だの……」
「なるほど…」
「要は振り回されてたってわけだ」
やれやれ、と薬研は肩を竦めて見せた。ちょいちょいと手で招かれて、顔を近づけると耳打ちをされる。
「ちなみに、今も隣の部屋にいるぜ」
…なんとなくそんな気はしていたが、まさか本当に聞き耳をたてられているとは。聞かれてまずい話をしているわけでもないし、いいんだが。
「それで、今日来たのは何の用だ?」
薬研は早速本題に入った。