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夜明け

第1章 暁闇



2

 本邸の広間だと思わしき場所へついた。
 廊下を辿って外側から回ってきたのはどうやら正解らしい。障子を挟んでなお、禍々しい気が伝わってくる。

 思わずつきそうになるため息をなんとか飲み込んだ。いくら神職についていたとはいえ、いくらそういう家系の出だからといえ、嫌なものは嫌であるし、付喪神といえどこんな数を目の前にするのは初めてだ。否が応でも緊張する。

 しかしつべこべ言ったところで事態は変わらないので、やるしかない。胸を打つ心臓を落ち着かせ、意識を中へと集中させる。

 いち、に、さん、し、……、中にいるのは五人か。話し合いをしていたのか、それとも普段からよく集まるのか。どちらにせよ、都合がいい。

 すぅ、と息を吸い、覚悟を決める。こんのすけを目の端でみやると、おろおろと顔を青ざめさせていた。
 こんのすけには悪いと思いつつ、俺はようやく口を開く。

「急に来て申し訳ない、少しいいだろうか」

 声をかければ、障子一枚隔てた奥の空気がガラリと変わった。明確な敵意に嫌悪。空気が痛いほどに張り詰める。
 血液が流れる音すら聞こえそうな静寂の中、ゆらりと空気が揺れた。りん、と響いた声は、確かに神のものであった。

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